【採用サイトの提案書】目的を明確にする(第1回)
ここでは就職情報大手マイナビで約10年間、さまざまな企業の新卒採用に関わってきた私の経験を元に、今後採用サイトを制作する企業や採用サイトを提案する制作会社に役に立つ情報を提供します。
最初にお伝えするのは「採用サイト制作の目的」を明確にすることです。採用サイトの必要性は理解している企業は多いのですが、目的を明確に設定していないケースがあります。その結果、社員紹介や事業紹介、職場環境の雰囲気など他の企業と差別化できないコンテンツで溢れます。採用サイトに掲載する情報には全て役割を持たせなければいけません。役割を持たない情報は掲載する必要がありません。その分、コストを削減し、他の採用活動に生かしたほうがよほど役立つでしょう。
集客なのか、理解促進なのか
例えば、誰もが知っている有名な大手お菓子メーカーと、知名度の低い従業員50名程度の地方企業があるとします。大手お菓子メーカーは毎年数万人のエントリーが集まり集客には苦労しません。一方、地方企業の場合は選考以前に求職者のエントリーが少ないため集客に苦労します。さて、両社が採用サイトを制作する場合、同じ目的・内容で制作しても大丈夫でしょうか。
採用サイトは存在すること自体に価値があるわけではありません。各企業が抱える採用課題を解決するためのツールとして役割を果たしてこそ価値が生まれます。だから、企業が抱える採用課題に合わせて掲載する情報や目的も変える必要があります。それなのに多くの採用サイトは平均的な情報しか掲載していません。平均的ということは、どんな求職者にも響かないということです。
集客に苦労する地方企業の場合は、「人を集めること」が目的ですのでネガティブな情報は避けるべきでしょう。ここでは求職者のエントリー動機を生み出すことが目的だからです。情報を見た求職者が「この企業、ちょっといいかも」と思えるような情報を掲載するのです。そして、エントリーしてもらえれば採用サイトの役割は終わりです。あとは説明会や面接で入社動機を高める施策を打つべきです。避けるべきは目的を複数持たせることです。目的はシンプルに設定しましょう。そうしないと採用活動終了後の「評価」が行えません。
一方、大手お菓子メーカーの場合は集客ではなく、むしろ求職者の「ふるい落とし」が必要です。このような企業は知名度やブランドだけでエントリーする求職者が多く、企業実態を理解していないケースが多いです。消費者としてみる企業イメージと、実際に社員として働く場合では実態が異なります。だから、この企業イメージのギャップを埋める情報が必要です。そのため集客だけを目的にした情報よりもネガティブかつ厳し目な情報も含みます。「実際はこんな企業だけど、本当に入社したいですか?」というメッセージを乗せます。選考活動はとてもお金がかかります。無駄な選考活動を避けるためにも、集客段階での選別は非常に重要です。
以上のように企業が抱える採用課題によって採用サイトの在り方も変わります。競合他社が採用サイトをリニューアルしたから自社でも作ろう、という安易な発想は単にお金と時間を無駄にするだけです。制作会社にとっては採用が成功しても失敗しても採用サイトは制作実績となりますが、企業にとっては失敗すればただの高価なゴミにしかなりません。言い方を変えれば、採用が成功すればどんなにショボい採用サイトであっても存在価値は高まります。つまり、採用サイトは見た目や情報量だけで判断すべきではなく、採用課題が解決できるツールか否かで判断すべきものだと認識しておきましょう。企業は制作会社から提案を受ける際、そこを徹底的に追及しましょう。